Solidworksは3D CADではない!??

By 名越正生 3219 日前

私にとってSolidworks(以下、SW)は、自分のやりたい事を効率よく現実化するためのツールでしかないと思ってます。ある意味SWで何かをしよう!と考えている人とは対極にいる人だと思ってます。

だけど、実際に使用してみて、SWはもっと評価されて良いのではないか?と感じる事が多いのも確かでした。
 
なんと言いますか、、、ひょっとして、SWについて、世の中には何か誤解があるのでは?と私は思っています。
 
その主たる原因は「3D CAD」という言葉からくるのではないでしょうか?
 
実際のところ、私自身も2005年ごろ、SWを3D CADだと思って購入しました。ラッキーだったのは、当初は部品10点程度のコンシューマ製品を開発するための購入で将来は装置の設計もするかも?という感じでした。
 
そして購入から2-3年の熟成期間?を経て、実際に中規模の装置ものを設計する事になりました。
 
(ここに掲載されるイラストは実際に設計したモデルです。)
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私がSWで装置ものの新商品を開発し始めた時、実はほとんど3D化への感動は無かったです。むしろ、だいぶ面倒くさいなと。
 
SWが真価を発揮し感動を覚えたのはむしろ、設計が終わってからでした。
 
一番の感動は、実際に装置の組み立てが出来るか、実際にゼロから部品を組み直してみた時です。
 
 
 
その時やっと気付いたんです。
 
「あれ、画面内に実物が存在しているよ!?」と。
 
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画面内で実際に部品を取り付ける作業は苦痛と言うよりは、むしろ楽しい作業でした。自分が本当に作業者になった気持ちになれたんです。
 
いつもは現場から「お前、ここのボルトどうやって締めるんよ!」とか言われているのが、今は自分が(画面に向かって)文句が言える立場になったのですから。
 
組み立てが終わった時、この装置は本当に組み付ける事ができると確信しました。
 
干渉チェック機能も強烈でした。
 
装置内のドアは、パートナーが2Dで設計してたので、念のためSWに落とし込んで合体たせてみたんですが、、、
 
これが当たるにも当たるにも!2Dでは分からなかった干渉が、面白いほど出てきたという事です。
 
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(追記)たったこれだけの機構なのですが、これが当たるんですよねー。(追記終わり)
 
これも、まず画面に向かって「お前何やってんの!」と文句を言って、すぐ自分でシコシコ直してましたが、どうにもニヤニヤが止まらないんですね。
 
さて、実物の組み立てでは、干渉は一ヶ所しかありませんでした。しかもその一ヶ所とは、モデル上隙間ゼロのところが寸法誤差で干渉してたんです。それぐらいなら現場も文句を言わずに直してくれます。ほぼ完璧な出来と言って良いでしょう。
 
また、もしこれをそのまま出図してたら?と思うとゾッとしました。納期がある中の干渉ほど寿命を縮めるミスはありませんからね!
 
また、パートナーが2Dでリンク機構を設計してたのですが、これも即座にSWのモーション分析へ、、、
 
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参考動画
 
(追記)Team Toyama交流会では、「モーション分かりません!」って手を上げましたが、実は昔やってたことを思い出しました。イラスト中の青色部分がリンクです。一見ストレートで単純そうですが、実はこれが曲者で、2Dではわからないところ。実際には複雑な動きをします。個人的にはリンクは大嫌いで、この時も「やっつけられた感満載」でした!笑(追記終わり)
 
結果、無理なリンク機構であることがわかりました。もう機械の横幅とX軸ストロークは決まっているからリンク機構を止めることも出来ないし。
 
結果、何度もモーションを確認し極力滑らかなリンクに直し、何とか動くようにはなりましたが。
 
さて話を本題に戻すのですが、要するに以上の話というのは、要約すると
 
「本来であれば組立工程で起こる事が、画面の向こうで起きている」
 
と言う、この一点なんですね。だから私は、「これは3D CADでは無い、画面の向こうに実物がある」と思ったわけです。
 
SWは事実、昔の2Dに比べればちと面倒くさい。部品を作り、部品を組み立てなければならない。最後に図面を作る。なんだか複雑だなと。
 
しかも面と面、ボルト穴とめねじの合致を作っていかなければならない。
 
ボルトとめねじがずれればエラーが出てしまう。
 
でもこれ、画面の向こうが仮想現実な訳ですから、これは起こって当然、というか起こってくれないと困る事なんです。
 
仮想世界であれば、干渉部を削るのもボルトのPCDを変えるのも、現実世界に比べれば、ほぼ一瞬と言えるレベル。しかも好きな時間を選んで自由に「干渉させられる」という快感。
 
好きな時間に私は、画面の向こうの工場でせっせと組み立て、干渉を直して、完成の喜びを味わう事が出来るんですね。
 
ただ一つ、欠点があるとすれば、現物の設備を見ても、感動が少なくなった事でしょうか?
だって、画面内工場で見たものと同じものがリアル工場にあるだけなんですから!
 
思い起こせば、3D機能は30年ほど前の一部のCADにも投影機能として存在していました。初めて使った時は感動がありましたが、それは正に平面に描かれた3Dであり、モデルではなかったと言えます。私はあれこそが3D CADなんだと思う事にしています。笑
 
SWを3D CADという事にしてしまったら、そこから連想されるイメージには、なんとも寂しいものがあると、私は思いますね。
 
おわりに
 
Team Toyama午後10時半、宴もたけなわ今にも一本締めしそうな雰囲気の中でPCを開けて熱く語り出したK氏に、大変感銘を受けました。
 
それはあえてSolidworksから一歩引いて3D CADソフトの本質に迫ろうとした意欲的なプレゼンであったと思います。
 
それに触発され、この記事を書きました。
 
尚、ここに掲載されたイラストの無断転載を禁じます。